まっきーのニッキー

主に自分宛の毒を吐きます。

第164回芥川賞を読みました。

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推し、燃ゆ

 

「推しが炎上した。ファンを殴ったらしい。」

最高にファンキーな書き出したから始まるこの作品が芥川賞受賞作ということで、普段は電子書籍で買うけど彼女とか上司とかに貸せるようにハードカバーで買った。

タイトルのノリも軽いし、純文学苦手ンゴ!呪術廻戦読ませろ!と叫ぶジャンプっ子達にも読みやすいと思う。そう思ってハードカバーで買った。彼女から去年のはじめにもらった図書カードを使った。

 

・感想に次ぐ感想

推しというフィルターを通さないと自分の重さに耐えられない主人公が、炎上した推しを推し続ける。

そこから描かれる圧倒的な若さ。それは爆弾のように周りを破壊して、自分をも壊していく。

ただし今回の俺たち(読者)の立場は主人公から離れたくても離れられない。つまり家族のような立場で破壊を待つ。スリル満点だ!

 

子役時代のピーターパンで「ネバーランドへ行こう。」「大人になりたくない。」と言った推しを研究に近いスタンスで崇拝する主人公。

推しを通して見た風景とただの生活の風景では描写が全く違う。主人公の狂気に距離を置きたくなる。

ただ、たまに出てくるブログの閲覧数、そこからも推しを通さない人としての承認欲求あることもわかる。閲覧数気にするのすごくわかる。

主人公が周り、手の届く範囲との関係を諦めてるのかもしれない。とにかく現実の生活に興味を持ててない。

 

主人公が漢字練習で放牧放牧放牧…、所持所持所持…、感じる感じる感じる…。この練習をしても本番で上手く書けない。ただ書けた放牧を「順番通りに書けた」と表現しているから、何かしらの学習障害が主人公にあることが確定する。

そんなのこっちはとっくに気づいてるわけよ。ただ読者の立場は家族なんだから、障害の診断書を突きつけられたような、そんな気がしてしまう。

母親もきつい。アスペルガー患者の身近にいる人がカサンドラなんたらとかになると聞いたことがあるけど、他人の子供にできることが上手くできない自分の子供に対して疲れてる。読んでてしんどくなる。妹は妹でお姉ちゃんは結局関係ないと割り切ってる。自分がナーバスじゃなければ大丈夫。(それでもアレクサと話すような簡単な受け答えしかしない。)

 

自分の推し活の中にあった余裕を責めるように自分を追い込んでいく主人公に感じるのもやっぱり青春。おめーら、今好きなものに命かけられるか?とあの頃に言われていたら、きっと頷いていたかもしれない。そんな何も分かってないようなバカらしさで若さを演出するのは天才。宇佐見りん最強。

 

そんで色々あってラストや〜〜〜。

えぐいてほんま。若さ最強じゃんね。

推しを通してでしか自分も周りも見ることのできなかった主人公が推しを失ってからどうするかって話なわけだから、この話でずっと描いてきた若さが初めてプラスの側面を見せてくる。つまり可能性。

若さが持っている可能性ってのはもう俺には届かないものであって、どんなにクソな人生を描いていようとひっくり返してくるからずるいよな。

 

めちゃくちゃ面白かった。

 

てかこの主人公の若さ、青臭さが俺と似ててめちゃくちゃ刺さるんだよなぁ。好きなもののために仕事をするところとか、自分の行動がそれありきなんだよね。依存してるつもりはないんだけど、仕事に真剣に取り組んだりとか、そういったことができない。切り離せない。でも本人的には頑張ってるつもりだから守ってほしいのよ〜〜〜〜〜〜。

もう可能性ないのに絶望的で草生えるわ。