まっきーのニッキー

主に自分宛の毒を吐きます。

賭ケグルイの森

ノルウェイの森(上)』(村上 春樹):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

年末年始に妻が帰省し、この家は私が一人で過ごしている。

片付けるのが面倒でソファに放置された洗濯物は、自堕落な私がソファで寝ることを防ぐ盾となっていた。我が物顔で陣取っていた大きなぬいぐるみを床に置き、彼のいた場所へ腰をかけ本を読んでいると、鼻の奥で液体がつたうのが分かった。やれやれ、また鼻血か。と僕は思った。何も考えていなかったため、鼻をほじったのかどうかも分からなかったが、とにかくソファを立ってティッシュを鼻に詰めた。1枚を適当に鼻に詰めたため視界の右側がちょうど今頃の長野のように白く覆われた。読書をするには都合が悪くなった私は、鼻血を止めている間に溜まっていた食器を洗った。その後に明日の朝に出さねばならないゴミをまとめた。私には妻が故郷から帰ってくる前に、冷蔵庫の中で年を越せなかった食材達を捨てる使命があった。

時計は23時を回ったところであった。

明日は中山競馬場に9時半に集合となっているが、私はこの家をゴミの回収に間に合う時間に出れれば、あとはなるべく早い時間に着けばいいと思っていた。9時半なんて早すぎる。やれやれ、また早起きか。と僕は思った。本当なら読書ではなく明日の予想をしておくべき時間だったが、夕方に寄ったコンビニに明日の競馬新聞が置いていなかった。鼻血が止まった私は、23:20締切の玉野9Rの予想をすることにした。

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競輪は競馬や競艇と違い、徒党を組むことが多い。ラインと呼ばれ、アプリによっては下に書いてある。この並びでレースを進めるわけである。逃げることが得意な選手にとっては後ろの選手が相手の進出を食い止めたりするし、差しが得意な選手にとっては風除けが前を走るだけで大きいのだろう。ラインは地元が同じとか、そういった理由で組まれることが多い。私は地元という言葉が、生まれとか育ちとか、そういった言葉より胡散臭く感じて好きではなかった。地元を気にする奴にロクな奴はいないと思っていた。

対戦成績からして、1.2.7車のラインがそれなりに走れそうだが、如何せん7の山根は実力が足りてないように思える。とはいえ対抗の3.4.5車はそもそも相手になるのかすら疑問である。仕方なく単騎の6を抑えるかとも思ったが、ここも単騎成績は12回中1着1回、ほか4着以下と買いたくなるような要素は乏しかった。

予想の必要のないレースだった。1と2を抑え、3か4のうちどっちかがくればいい。7は論外、5は少し怖いが点数が増えるのも嫌だった私は5を切る代わりに1と4を重く抑えた3連単を買い足した。

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とにかく1が来ないと話にならないが、実力差が大きいから安心である。怖いのは1と2に引っ張ってもらった7がそのまま3着で入線することだ。買えばよかったと思った。

レースが始まるとすんなりとライン通りの隊列となった。誤算だったのはペースメーカーが外れる周回で2が1の後ろから3の進撃を妨害したことだった。1が思ったより長い距離を引っ張ることになった挙句、最終周回で再度走ってきた3.4.5の隊列に1と2が分断され、1の進路がなくなってしまった。ボケ。

3>2>5 三連単は214倍。

また、鼻血が出てきた。

私はソファに座り、深くため息にもならない失望を吐き出し、血が垂れないように上を向きながら妻の帰りを待っていた。