まっきーのニッキー

主に自分宛の毒を吐きます。

喧騒マン

第124話]チェンソーマン 第二部 - 藤本タツキ | 少年ジャンプ+

喧騒讃歌

この世の恐ろしいものに、悪魔が憑くとしたら、きっといます。喧騒の悪魔。喧騒マン。

チェーンソーも、戦争も、核兵器も、喧騒に含まれるので、きっと強いと思います。喧騒の悪魔。

しかし、週の大半を一緒に過ごしていた友達が、ダバオ?に引っ越してから幾星霜、私は孤独に包まれていました。喧騒が恋しい。矢継ぎ早に語られるエピソードトークが恋しい。今では回線の不安定なLINE通話でのみ、供給されています。俺の心は飢えたままです。心八分目といったところ。

くよくよしていても、ダバオ宛の心に消印は押されないので、アルバイトでもしようかと、そう思いました。私は仕事柄、アルバイトをしても、なかなか友達ができるものでもないため、友達を求めて飲食店でアルバイトをしようと思います。飲食店のアルバイトは、喧騒という拙劣を、絆という0.01mmのオブラートに包んでいそうで、大嫌いです。なれども虎穴に入らずんば虎子を得ず。決死の覚悟でアルバイト先を探します。

寿四浪

火曜と金曜の仕事が終わると、ため息が出る。このあと19時には、寿四浪でタイムカードを押さなければならない。19時から23時まで、4時間。情報では毎日キッチンに10人強が入るシフトが組まれると、そう聞いて決めた寿四浪。私は保留が多ければ、それだけ当たりやすいという遊戯脳の持ち主だった。

私が控室に入ると、舌打ちをされる。あぁ、転落抽選。私が何をしたというのか。自己紹介で「お寿司が好きです。」と言ってしまったことか。いつも同じパーカーで出勤しているからか。週に5日くらいしかシャワーを浴びないからか。昼間は普通に働いているからか。心当たりばかりで、かなりがっかり。対あり。他の保留達は、そんなあけすけに態度には出さないが、この転落保留だけは私をいじめてくる。体の中の、心に近い何かが萎むのが分かる。

寿四浪は去年のZ世代によるテロで、ベルトコンベヤに寿司が乗ることは無くなった。しかし寿司は握られる。フードロス対策として食べ続けるのはバイトの仕事である。関サバ、アジ、ホタテ、ネギトロ、ブリ、アナゴ、甘エビ、イカ、コハダ、カンパチ、鯛、カツオ…。また転落保留が近づいてくる。奴はカツオが食えないのだ。衛生のために装着しているポリエチレンの手袋。カツオが握られている。いやだ。もうお腹いっぱいだ。

「おら!食えよ!!寿司好きなんだろ!!!」

ほっぺたにぐりぐりとカツオを押し付けてくる。

「お、俺は両面宿儺じゃないっつーの!」

やめてくれないか。そんな懇願を込めるつもりが、焦って時代錯誤な例えツッコミをしてしまう。

「ハァ?」

あぁ、やってしまった。周りからの視線が痛い。私はただ、寿司を食べていただけなのに。私はいつもこうだ。空気が読めないのだ。そもそも今思うと、ツッコミが正解の場面ですら無かった。また、間違えてしまった。寿四浪は、その日限りで辞めました。給料はトルコでもウクライナでも、好きなところへ寄付してください。さようなら、転落保留。

結局アルバイトで友達を作るなんて、幻想。幻想マン。